こんにちは。
今日はアンパンマンの生みの親やなせたかし先生の『明日をひらく言葉』という本を読みました。
今回は、この本を読んだ感想をまとめていきます。
アンパンマンというキャラクター
私がこの本で感動したのは、アンパンマンというキャラクターの在り方でした。
正義の味方として、我が身を惜しまずあんパンである顔を分け与え、敵であるバイキンマンも、決して殺すようなことはせずに殴って家に帰すだけ。あのあんパンチの後の捨て台詞「バイバイキーン」が帰宅台詞であるのは初めて知りました。
何の複雑さも無い、幼児向けらしい絵本作品だと思っていたアンパンマン。私も子供の頃には朝の放映のために早起きしていた記憶があります(見終わると二度寝したことも(笑))
そんなアンパンマンを先生は「最弱のヒーロー」と評しています。そしてそのヒーロー性は今もってアンパンマンオリジナルといっていいでしょう。自分が損をしてしまうようなことでも平然と手を差し伸べ、悪に対しても滅するまで行うことはしない。悪を滅しないのも、先生独自の価値観であり、心の芯まで善人がいないように、心の芯まで悪人がいない。だから、命を奪うようなことはしない。
ただただ無邪気に見ていたアンパンマン。そのアンパンマンに、こんなに先生のテーマが込められていたことを本著を読んで初めて知りました。先生は、幼児向けだからといって甘く見てはいけない。子供だからこそ、純粋にその本のメッセージを受け取ることができる。そのメッセージが無い本などはすぐに捨てる、冷徹な評論家であると。
アンパンマンが、何世代にも渡って愛されるのも、そのメッセージが込められているからなのでしょう。子供の頃は明確に理解していなかったメッセージを、親の世代にまで歳を重ねたときはじめて理解する。絵本でありながら、幼児向けとひとくくりにしてはいけない、その凄味を感じました。。
テーマを見失わない
そのアンパンマンがヒットした理由を、先生は安易に流されず、テーマを見失わずに継続してきた結果だと述べています。
売れる作品を作るためには毒を入れることを当然とする流れの中で、先生は頑として毒を入れることを拒みました。毒とはいわゆる過激な表現を指すのでしょう。先生はあくまでも毒を入れない。テーマ性で競争し続けてきたことを語っています。
子供向けの絵本であっても、登場人物が死ぬ…いや、殺される作品は少なくありません。ごんぎつねやかちかち山のたぬきはいい例でしょう。そんな中でアンパンマンは決してそういったことはありません。前述したように、例えどんな悪役キャラであっても、殺すことをしてはならない。悪役もまた、殺すことはしない。
そのテーマが生まれたのが、戦争という悲劇を直接体験した先生だからなのでしょう。直接生死の在り方を見てきたからこそ、死ぬこと、殺すことの愚かしさを知っている。だからこそ、その愚かな行為をしてはならないという思いが、アンパンマンという作品に出ています。
最後に
本著には他にも先生のこれまでの経歴にも触れており、本人は器用貧乏で突出したところがないと表現する一方、周囲はラジオ台本から歌手までなんでもこなすマルチな才能の持ち主と見ていたりと、改めて先生の凄さを実感する本でした。
そして何より、先生がこれまで続けてこれたのは、何よりも漫画を描くのが好きだったからだと語っています。好きなことだからこそ続けられる、続けられるから成果が出る。70歳を超えてようやく日の目を浴びたアンパンマンだからこそ、その言葉の重みが違います。
先生の生きざまから、好きなことをすること、続けることの素晴らしさを実感することができました。
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